Volume7 将来へ(あすへ)

  Volume7 将来へ(あすへ)

はじめての曲づくり。
プロデューサーから「前を向いて生きていこう。」そんなイメージの曲にしないかと言われま
した。内心、ビックリ。 理由は、後ほど。
髙橋真梨子さんの曲を書いている松田良さんにお願いしました。松田良さんの太くて優しい声
でLaLaLa…で届きました。
難しい曲は歌いやすくシンプルな曲は歌うのは難しい…。これはどうだい!歌えるかな!と大
きな宿題を出されたような気持ちになりました。
歌詞は作詞家 山本美鈴。車で走れる千里浜なぎさドライブウェイから歌仙貝が打ち寄せる富
来町の増穂が浦が舞台です。
さて、初めてのレコーディングの当日。私達はミュージシャンが誰か知りませんでした。
西本さんが、尾崎豊の「I LOVE YOU」のレコーディングメンバーだとメンバーリストに名前
を書きながら口にしました。
ピアノ西本明、ギター鳥山雄司、ベース本田達也、ドラム瀧本季延、この4人でのレコーディ
ングはその時以来37年振りだと、懐かしそうで嬉しそうにセッティングしていました。
曲づくりがいよいよ始まると、みんなの魂が入ってボルテージは最高潮。
そんな中、私の緊張を緩めようとドラムの瀧本さんが私に話しかけてくれました。 瀧本さんの
奥様のお名前が同じ美鈴さんだったり、石川県に親戚が沢山いるんだよと、金沢弁で盛り上げ
てくれて、私も金沢弁を話して随分と気持ちが解れました。
仮歌は一発で歌えましたが、いざ、歌入れの時に思う様に歌えない。悔しい…。
納得出来なくて、どうしようと思い、ひとりの女性の顔が浮かびました。
レコーディングの少し前の事です。
どうしても私に会いたいと言われたので、尋ねると「目が段々と見えなくなるから、美鈴さん
の顔を見ておきたくて呼びました。」
思わず抱きしめて 好きなだけ話したり泣いてもいいんですよ。とふたりで泣きました。
その女性に電話をしました。 私の声を聞いたら「どうしたの、美鈴さんのお母さんの代わり
にはならないけど、良かったら話してみて。」と言ってくれました。
私は正直に、凄く練習したのに中々自分の思うように唄えない…と話しました。
すると、「こんな話をラジオで聞いたばかりよ。オリンピック選手は最善を尽くす為に例えば
走る人ね、走るフォームになると目を閉じて真っ暗だと決める。自分だけに天からスポットラ
イトが照らされる。」平常心を維持する為のイメージトレーニングだと言っていたわよ。
昨日聞いたばかりだから、美鈴さんのお役に立てれば良いわ…と話してくれました。 いつも冗
談ばかりを言っている素敵なミセス。はじめて真剣に話してくれました。その通りにイメージ
して歌ったのがアルバムに入っている「将来へ」です。
母が他界する前に「あなたが歌う時は世の中がどん底のとき、あなたは前を向いて生きていこ
う!と希望を持って生きることを唄うの。そして、唄えば楽しくなるよ。関わる人、出会う人
はみんないい人で、あなたのために曲を書いてくださった人の曲は世に羽ばたくの。良かった
ね。歌うこと、ずっと反対してきてごめんね。」そう言って頭を下げていました。
2018年8月のことでした。
その通りになっています。「ありがとうございます。」
♬苦しみも 悲しみも それだけ幸せになれる 優 しさも 労りも それだけ 人を愛せるから